画面をオレンジ色にした。これで睡眠対策は済んだ、と少し安心する。あとはいつもどおり、動画を一本、返信を一つ、気になる投稿をもう少し。気づけば、寝るつもりだった時刻を四十分過ぎている。

ナイトモードは画面の色を変えます。四十分を返してはくれません。 寝る前のスマホを考えるなら、ブルーライトだけに責任を押しつけないことです。光、使う時間、見ている内容、通知。それぞれ別のところから、夜の終わりに入ってきます。

スマートフォンは便利です。読書も、家族との連絡も、明日の用意もできる。その道具を悪者にするより、何のために開き、どこで閉じるかを決めたい。睡眠のために暮らしを不便にする話ではなく、便利な道具に夜の全部を渡さない話です。

寝る前のスマホで、何が問題になっているのか

「スマホが睡眠に悪い」という一文には、違う問題が詰め込まれています。

見るところ夜に起きていることの例変える対象
光暗い部屋で明るい画面を長く見る画面と部屋の明るさ、使う時間帯
時間見続けて就寝が遅れる始める内容、終える時刻、次への移動
内容議論、勝負、気になるニュースの続きを追う夜に扱う内容と、その区切り
通知置いたあとも着信や通知で再び開く通知の種類、連絡の例外、置き場所

光を減らす設定をしても、使う時間が延びるなら、その時間は残ります。通知を止めても、自分から何度も開くなら、それは別に見るところです。

対策をしたかどうかより、何が変わったか。 ここを基準にすると、自分の夜に合う変更を選べます。

寝る前のスマートフォンを光、時間、内容、通知の四つに分け、それぞれの変更対象を示す図

ブルーライトは無関係ではない。ただ、色だけの話でもない

夜の光は、体内時計や眠気に関わります。厚生労働省の睡眠ガイドも、就寝前や睡眠中の光環境を扱っています。画面の短い波長の光を気にする理由はありますが、「青い色だけを減らせば解決」と話を縮めないことです。

2015年の研究では、健康な若い成人12人が、発光型の電子書籍端末と紙の本を読む条件に参加しました。各条件で、就寝前の四時間の読書を五晩続けています。発光型端末の条件では、メラトニンの抑制や分泌時刻の遅れ、寝つきと翌朝の覚醒度への影響が示されました。

これは、光を出す端末を夜に使うことが、生理的な変化につながると示した実験です。同時に、長い読書時間を設定した少人数の実験でもあります。短いメッセージを一回読む行動へ、同じ大きさの影響をそのまま移せるものではありません。

日常では、画面の明るさ、見ている時間、部屋の照明なども変わります。だから、ブルーライトを恐ろしい敵にする必要も、存在しない問題として笑う必要もない。夜に必要以上の光を浴び続けない。その上で、画面の前にいる時間も見る。

色を変えたあとに明るさを上げて長く使い続けるなら、対策の意味をもう一度確かめたい。設定画面で終わる問題ではありません。

ナイトモードの実験は、何を示したか

「Night Shiftをオンにすると、よく眠れるのか」。この問いを調べた2021年の研究があります。

18〜24歳のiPhone利用者167人を、就寝前一時間の使い方で三群に分け、七晩追跡しました。

  • Night Shiftをオンにして使う。
  • Night Shiftをオフにして使う。
  • スマートフォンを使わない。

手首の加速度計で睡眠を評価した結果、全参加者の解析では、三群の睡眠指標に有意な差はありませんでした。

この結果から、ナイトモードで睡眠が改善すると保証はできません。同じくらい大事なのは、「使わない群も含め、全体では差がなかった」という部分を省略しないことです。都合のよい二群だけを取り出して、「フィルターは駄目、使わなければ必ず改善」と読むのも正確ではありません。

睡眠時間で分けた追加の探索的解析では、一部の参加者で使わない条件が良い結果を示しました。ただし、全体の主な結果と、後から分けた群の結果は同じ重みでは扱いません。

私は、この研究を「スマホは安全」という免許証にも、「ナイトモードは全部無意味」という宣言にも使いたくありません。画面の色を変えるだけで、夜の使い方を考えなくてよくなるわけではない。 自分の生活へ持ち帰るなら、その結論です。

167人の七晩の実験では、Night Shiftオン、オフ、スマートフォンを使わない三群の全体解析で睡眠指標に有意差がなかったことを示す図

四十分の動画は、四十分の睡眠を押し出すことがある

0時に寝る予定で、朝7時には起きる。23時50分に「一本だけ」と動画を開き、0時30分に閉じた。そのあと歯を磨き、寝る用意をする。画面の色がどれだけ穏やかでも、眠るために残った時間は予定より短くなっています。

ここで必要なのは、脳内の細かな説明より、時計です。

スマホを閉じてからすぐ眠れるとは限りません。翌朝をずらせないなら、見る時間が延びた分は、睡眠の機会へ入り込みます。この例は予定の説明で、全員が七時間で足りるという意味ではありません。

確認したいのは、一日の総使用時間より、寝るつもりだった時刻を何が越えさせたかです。昼の地図や家族への連絡まで減らすより、夜に続いている動画、ゲーム、SNSの区切りを変えた方が、目的に合います。

スマホの使用状況を確認できる機能があるなら、それも手がかりになります。ただ、数字を眺めて反省するだけでは夜は変わらない。延びた時間を作っていたアプリへ、終える条件を置きます。

画面を閉じても、話の続きが残る

腹の立つ投稿を読んだ。返信を考える。送らずに閉じたのに、頭の中ではまだ文章を直している。画面は暗くなりましたが、議論は終わっていません。

あるいは、ゲームをもう一戦。負けたまま終わりたくない。勝ったら気分がよくなり、もう一戦。どちらでも続くなら、「納得したらやめる」は、終了条件としてずいぶん頼りない。

ここは、すべての内容が同じように睡眠へ作用するという話ではありません。自分にとって、閉じたあとも追いかけたくなる内容を、寝る直前へ置いていないかを見ます。

議論とニュース

夜中に返事を完成させなくてもよいものは、翌日に回す。返す必要があるなら、要点だけ残す。「この件は明日確認する」と次の行動を決めれば、画面の外でいつまでも続きを作ることから離れやすくなります。

動画と短い投稿

一本を選んでから見る。次々に出てくるものを、その場で選び続けない。自動再生を切り、見終えたらアプリを閉じる。「短い動画だから」は、短い夜の保証にはなりません。

ゲーム

最後の一戦を始める前に決める。対戦相手や友人がいるなら、「今日はこれで終わる」と伝える。勝ち負けを区切りにするより、予定の中で楽しみを終えます。

必要な連絡と、ずっと開いている入口を分ける

寝室にスマホを持ち込まない、という方法が合う人もいます。けれど、家族からの連絡を受けたい人や、アラームとして使っている人には、そのままでは不便です。

必要な機能を残し、それ以外を閉じる。この考え方で十分始められます。

残したいもの夜の使い方を変える例
家族や緊急の連絡通知を制限する機能で、必要な相手の例外を確認する
アラーム音が鳴る条件を確かめ、手を伸ばして画面を見続けない位置へ置く
翌日の天気や予定決めた時刻に一度確認し、その後にSNSへ移らない
読書や音声今夜読むところ、聴くところを決め、終えた後に別のアプリを開かない

通知制限の例外やアラームの動作は、端末と設定によって違います。名前だけを信じて当日の夜に初めて使うより、実際に確かめておく方が確実です。

また、連絡のために開くたび、目につく場所にSNSがあるなら、ホーム画面や配置を変える余地があります。目的の機能を使うことと、毎回別の入口へ進むことを分けたい。

寝る何分前にやめる?数字を境界線にしない

「何分前までなら大丈夫か」。知りたくなる質問ですが、全員に同じ安全な分数を渡すことはできません。光の条件も、内容も、寝る時刻も違います。

NHLBIは就寝前の一時間を静かに過ごし、強い人工光を避けることを勧めています。日々の予定へ使うなら、まず動画やSNSを終える時刻を決め、寝る前に静かな時間が残るようにします。

たとえば0時ごろに眠る準備を整えたいなら、23時30分に動画とSNSを閉じる。残った用意を済ませ、照明を落として静かに過ごす。この三十分は、記事の予定例です。「三十分を守れば影響が消える」という生物学的な境界ではありません。

今夜の使用目的を選ぶ、動画やSNSを閉じる、必要な連絡とアラームを残す、静かな時間へ移るという流れ

近くに置くとまた開くなら、置き場所を変える。時間になってもやめられないなら、始める内容を変える。画面を閉じたあとも話の続きが気になるなら、その内容を夜の最後に選ばない。守れなかった数字を責めるより、続いている行動へ手を入れます。

本当に手放したくないのは、スマホだろうか

夜のスマホが、一日の中でようやく持てた自分の時間になっていることもあります。端末を遠ざけただけでは、その時間を失う不満が残るでしょう。

「動画が見たい」と「まだ今日を終わらせたくない」は、似ていて違います。寝るのがもったいないと感じる理由を考えると、使用制限だけでは足りない部分が見えてきます。

楽しみを消すことが目的ではありません。今夜したいことを先に選び、そこへ時間を使う。そして終える。自由時間を全部取り上げたあとで「明日から早く寝ろ」と言うより、その方が暮らしを続けられます。

紙の本に替えれば、自動的に良い夜になるとも限りません。読書に夢中で就寝が遅れれば、時間の問題は残ります。電子書籍、紙の本、音声。形を選ぶときにも、いつ終えるかは自分で持っておきたい。

画面の色より、夜の終え方を変える

今夜は三つだけ確かめます。画面が必要以上に明るくないか。何を見終えたら閉じるか。置いたあと、何の通知を受ける必要があるか。

ナイトモードを使いたければ使う。それを理由に、終わりのない閲覧まで睡眠対策済みにしないことです。画面が暖色でも、気になる投稿の続きを朝まで追えば、夜は長くなります。

十分な睡眠の時間を作っても眠れない状態や強い日中の眠気が続くなら、スマホだけを原因と決めつけず、医療機関へ相談してください。

スマホを置いたあとに、何も起こらない時間が少し残る。返信しない。次を選ばない。続きを追わない。それは退屈な空白というより、今夜はもう終わったと自分に伝える時間です。

便利な道具を持つことと、いつでも応じることは違います。今日はここまで。画面の色だけでなく、その一言を自分の夜に持っておきましょう。

よくある質問

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ナイトモードにすれば寝る前にスマホを使っても大丈夫ですか?

画面の色を変えるだけで、睡眠への影響をなくせるとは言えません。ナイトモードにしても、長く使うこと、気になる内容を読むこと、通知に応じることは残ります。色に加え、明るさ、使う時間、終える条件を見直します。

寝る何分前にスマホをやめればよいですか?

全員に共通する安全な分数はありません。まず就寝前の時間を静かに過ごせるよう、動画やSNSを終える時刻を決めます。30分前から終える例もありますが、効果を保証する境界ではなく、生活の中で試す予定です。

ブルーライトは睡眠に関係ないのですか?

関係ないわけではありません。夜の光は体内時計や眠気に関わり、発光型の端末を使った実験でも変化が示されています。ただし、日常の影響を色一つで決められません。明るさ、時間帯、使用時間、内容を合わせて考えます。

寝る前に電子書籍を読むのも避けるべきですか?

発光する画面か、照明の使い方はどうか、何時まで読むかを確かめます。紙の本なら無制限に読んでよい、電子書籍なら短い使用でも同じ影響が出るという区別ではありません。読書にも今夜の区切りを作ります。

家族の連絡やアラームのためにスマホを枕元に置く場合は?

必要な機能を残し、不要な通知を減らします。通知を制限する機能の例外設定とアラームの動作は、実際に確認してください。手に取るたびにSNSを開かないよう、置き場所やホーム画面を調整する方法もあります。

出典参考資料・文献

本文で参照した資料です。リンクは新しいタブで開きます。

  1. 01Changほか(2015):夜の発光型電子書籍と紙の読書を比較した実験
  2. 02Duraccioほか(2021):iPhoneのNight Shift、通常使用、使用しない条件の比較
  3. 03厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023 — 光環境と就寝前の過ごし方
  4. 04NHLBI:Healthy Sleep Habits — 就寝前の静かな時間と人工光