夜八時半。冷蔵庫を開けると、調味料は立派にそろっている。食べるものは、あまりない。週末には料理をするつもりだった。あのときの自分は、平日の自分にずいぶん期待していたらしい。
一人暮らしの食事は、毎晩料理をする前提を外したほうが整えやすい。 ごはんを用意する。主菜を一つ決める。野菜の料理を足す。作る、温める、買ってきたものを並べる。この三つを混ぜて、帰宅後の自分でも食べられる形にします。
包丁さばきを披露する相手はいなくても、自分には食事が必要です。この記事では、腕前を上げる前に、空腹のまま考え込まなくて済む買い物と保存の仕組みを作ります。
自炊が続かないなら、料理と食事を分けて考える
「自炊を始めよう」と思うと、献立、買い出し、下ごしらえ、調理、洗い物が一度にやってきます。帰ってから全部をする予定なら、料理が好きな人でも気が重い日はある。
そこで、一食を完成させる方法を三つに分けます。
| 方法 | 夕食で使う例 | 引き受ける手間 |
|---|---|---|
| 作る | ごはんを炊く、魚を焼く、野菜を調理する | 調理と片付け。余裕のある日に選ぶ |
| 温める・組み合わせる | 冷凍ごはん、加熱する冷凍野菜、納豆、缶詰 | 表示に沿った加熱と盛り付け |
| 買ってくる | 焼き魚の惣菜、野菜の小鉢、弁当 | 買う時間と、内容を選ぶ判断 |
夕食の全部を、同じ方法でそろえる必要はありません。主菜は買う。ごはんは家で温める。野菜は冷凍食品から。それで一食になります。
料理の手間を減らすことと、食事の内容を諦めることは別です。手間を減らした分、何を食べるかに頭を使える。
まずは主食・主菜・副菜。皿の数を競わない
食事を組み合わせるときは、料理の名前より役割を見ます。
主食は、ごはん、パン、麺など。主菜は、魚、肉、卵、大豆製品などを使った料理。副菜は、野菜、きのこ、海藻などを使った料理です。農林水産省の食事バランスガイドでは、これらに牛乳・乳製品と果物を加えた五つのグループを扱っています。
例えば、うどんにおにぎりを付けると、料理は二つでも主食が重なります。そこへ足したいのは、もう一つの炭水化物ではなく、主菜や野菜の料理。カレーや丼のような一皿料理も、具の種類と量を見れば考えられます。
夕食の三つの役割を入口にしつつ、朝昼や間食も含めて、乳製品や果物をどこで食べるか考える。毎晩すべてを大皿に並べる話ではありません。
塩気の強い主菜なら、野菜まで濃い味にしない。弁当を買ったなら、すでに入っているおかずを見てから足す。増やすことだけが調整ではないので、量も自分の食欲や一日の食事に合わせます。
買い物は、まず「家で食べる三晩」を決める
一週間分の献立は美しい。しかし、水曜に食事へ誘われた時点で計画が崩れる。予定を守るために、帰宅後もう一度夕食を食べるわけにもいきません。
最初は、家で食べる予定の三晩だけ決めます。これは栄養上の最適日数ではなく、買いすぎを減らすための提案です。帰宅時間と冷蔵庫の大きさに合わせて変えてください。
買う前に、家にあるものを確認します。ごはんはあるか。開けた食品は残っているか。冷凍庫に一袋入る場所はあるか。買い物メモは、その後です。
三晩分の、調理を少なくする買い物例
次は夕食の組み合わせを作る例です。三日分の栄養を完全に満たす献立ではなく、食品の量は自分に合う一食分を用意します。
- 主食: ごはん三食分。家の冷凍ごはん、パックごはんなどから選ぶ。
- 初日の主菜: 納豆一パックと、食べきれる大きさの豆腐。
- 別の日の主菜: 食べきれるサイズの魚の缶詰一つ。
- 野菜: 三食で使う量の冷凍野菜。買う袋の大きさと調理方法を確認する。
- 三晩目の主菜: 当日に買う焼き魚などの惣菜。予定が変わりやすい一食は、先に買い込まない。
| 家で食べる日 | 組み合わせの例 | 帰宅後にすること |
|---|---|---|
| 一晩目 | ごはん+納豆・豆腐+野菜 | ごはんと野菜を表示に沿って加熱する |
| 二晩目 | ごはん+魚の缶詰+野菜 | 温め、缶を開け、食べる量を盛る |
| 三晩目 | ごはん+買った主菜+野菜 | 主菜を買い足し、家の食品と合わせる |
三晩が連続する必要はありません。初日に使う予定でも、食品の期限がそれより短ければ、その予定は変更します。組み合わせ表は保存期限の保証書ではない。
好みに合わせ、納豆を調理済みの卵へ、魚の缶詰を別の主菜へ替えて構いません。ただし、大袋を開けて少しずつ使うなら、開封後の保存と使いきる予定も必要です。一人用の量には、無駄と判断を減らす価値があります。
食材は「先に食べる」「冷凍」「予備」に分ける
冷蔵庫に入れた順ではなく、使う順を決めます。期限の短い食品や開封した食品は、見える位置へ。冷凍食品は、必要な量だけ取り出せるように。常温保存できる未開封品は、家で食べる予定が増えた日の予備にします。
予備は小さくていい。パックごはんと魚の缶詰など、表示に沿って保存でき、組み合わせを思い出せるものを置く。食品庫を防災倉庫のように埋める前に、使った分を補充する習慣を作ります。
冷凍野菜も、「解凍すれば食べられる」とは限りません。加熱が必要か、電子レンジが使えるか、袋のまま加熱できるかは商品ごとに確認します。自然解凍は、それができると表示されたものに限る。
パウチ入りでも、すべて常温保存とは限りません。「要冷蔵」などの表示を読み、冷蔵・冷凍が必要な食品は帰宅したら速やかにしまいます。包みの見た目より、保存方法の文字のほうが役に立つ。
作り置きは、冷ますところまでが調理
週末に料理するなら、一品から始めます。ごはんを一食分ずつ用意する、野菜のおかずを作る。その程度でも、平日の仕事は減ります。
問題は、作った後です。大鍋のカレーをコンロに置いたまま、「あとで冷蔵庫へ」と思って寝てしまう。これは翌日の自分へ夕食を用意したつもりで、保存を終えていない状態です。
農林水産省は、作った料理を浅い容器に小分けし、速やかに冷まして冷蔵・冷凍する方法を案内しています。カレーや煮物では、冷める間に増える食中毒菌にも注意が必要です。室温で長く置いたものを、最後に温め直せば帳消しになるとは考えない。
再加熱するときは、全体を十分に温めます。電子レンジで加熱できる料理も、冷たい部分が残らないよう、製品や機器の使い方に沿って混ぜるなどして確認します。
家庭の作り置きに、何でも「冷蔵で一週間」という期限は付けられません。料理と扱い方で条件は変わります。冷蔵したものは早めに食べ、すぐ使わない分は適した方法で冷凍する。作った日を容器に書くと、記憶力に頼らずに済みます。日付を書くこと自体が安全を保証するわけではありませんが、少なくとも「いつ作ったか」という謎は消えます。
食費は「買った量」より「食べた量」で見る
大容量は割安に見えます。使いきれれば、その通りです。使いきれなければ、冷蔵庫の中に安くないごみが残る。
例えば、四回使うつもりで買った食品が600円だったとします。一回分150円の計算です。しかし二回使い、残りを捨てたなら、支払った600円に対して食べられたのは二回分。実際に食べた一回分へ割り振ると300円になります。これは費用の考え方を示す仮の数字で、商品の実売価格ではありません。
少量の商品や、一食分の惣菜が必ず安いとは言いません。ただ、量の単価だけでは比較できない。保存場所があり、予定どおり使えるかまで見ます。
| 買い方を決める前に | 確認すること |
|---|---|
| 大容量を買う | 何回で使うか、保存できるか、同じものを食べ続けられるか |
| 冷凍食品を買う | 冷凍庫に入るか、一回分ずつ使えるか、調理方法が合うか |
| 惣菜を買う | 主食や野菜まで買い直す必要があるか、家の食品と合わせられるか |
それから、「調理五分」という言葉を、自分の夜の所要時間だと思わないこと。買い物、解凍、皿を出す時間、洗い物は、レシピの外にあります。時計を一度見れば、何が負担なのか分かる。包丁を使う時間より、油の付いたフライパンを洗うのが嫌なのかもしれません。
疲れた夜と、台所を使えない夜の逃げ道
帰宅してから何も作りたくない日には、買った主菜と、家にある主食・副菜を合わせます。弁当を買うなら、その中身を見て不足する役割だけ足す。疲れている日に、普段より複雑な判断を要求しない。
電子レンジがなければ、そのまま食べられる食品で組みます。パンに、魚の缶詰や調理済みの卵、洗浄済みでそのまま食べられるサラダ。冷凍食品や加熱前提の商品は、この場面の選択肢から外します。台所の設備に合わない便利さは、便利ではない。
家に食べるものがない日には、外で食べてもいい。そのときの選び方は、外食で昼ごはんを選ぶ記事で扱います。家でも外でも、何を補うかが分かると、食事の選択はつながります。
一週間、献立より「使えたか」を記録する
最初の一週間に残す記録は、料理の写真ではなく、この三つです。
- 帰ってから食べるまで、何が面倒だったか。 献立を決めること、加熱、洗い物など。
- 買ったのに使わなかったものは何か。 予定が変わったのか、量が多かったのか。
- 疲れた日にも使えた組み合わせは何か。 次の買い物では、それを残す。
使わなかった葉物は、次回は少量にするか、使いやすい冷凍食品へ替える。飽きた主菜は別のものへ。食事の仕組みは、一度作って完成するものではありません。実際の暮らしに合わせて直していきます。
私は、ひとりで食べる日の扱いに、その人の生活への姿勢が出ると思っています。誰かのためなら手をかけられる。でも、自分だけだからと、いつも後回しにする。その癖は、料理が上達するまで待たなくても変えられる。
今夜の自分を、空腹のまま放っておかない。ごはんを温め、食べるものをそろえ、座る。華やかではないけれど、自分の暮らしを引き受ける、確かな一仕事です。
よくある質問
6件の質問を見る閉じる
一人暮らしで自炊しないと、食事は整いませんか?
一から作らなくても、主食・主菜・副菜を組み合わせられます。パックごはん、納豆や豆腐、魚の缶詰、冷凍野菜、惣菜などを使い、その日の食事に足りない役割を足します。料理したかどうかより、食べた内容と量を見ます。
一人暮らしの買い物は、何日分から始めるとよいですか?
この記事では、実際に家で食べる三晩を決める方法を提案しています。三日分が科学的に最適という意味ではありません。外食の予定、食品の期限、冷蔵庫の空きに合わせ、使いきれる量から始めます。
料理をしない日の夕食は、何を組み合わせればよいですか?
例えば、ごはんに納豆と豆腐、加熱した冷凍野菜を合わせる方法があります。別の日は魚の缶詰や買った主菜を使えます。これは組み合わせの例で、必要な量は自分の食事全体に合わせて調整します。冷凍食品は調理方法の表示を確認してください。
電子レンジがなくても、食事を整えられますか?
そのまま食べられるパン、納豆や豆腐、調理済みの卵、魚の缶詰、洗浄済みでそのまま食べられるサラダなどを組み合わせます。加熱が必要な製品は、そのまま食べる前提で選ばないこと。保存条件も確認します。
作り置きを一週間分まとめて冷蔵してよいですか?
家庭の作り置きに、一律で一週間安全という保存日数は設定できません。料理、扱い方、保存温度で変わります。作った食品は浅い容器に小分けし、速やかに冷まして冷蔵・冷凍し、冷蔵したものは早めに食べきります。鍋のまま室温に放置しないでください。
食費を抑えるなら、大容量の食品が得ですか?
食べきれれば単価を下げられますが、使えずに捨てる分があれば実際の負担は増えます。保存できるか、いつ使うかを決めて比較します。少量の商品や惣菜のほうが、結果として無駄を減らせる場合もあります。
出典参考資料・文献
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