「まだ相談するほどではない」と思いながら、月日が過ぎていませんか。受診には勇気がいるし、精液検査のことを考えると気が重くなる人もいます。けれど、相談は「自分に問題がある」と認める手続きではありません。二人の状況を整理し、次に何を確かめるか決めるための一歩です。
この記事では、妊娠を試みている期間とパートナーの年齢から受診の目安を確認し、男性の初診で聞かれること、精液検査への不安をどう伝えるかを説明します。まだ妊娠を試みていない段階の人には、男性妊活の最初の一歩から読むと、二人で話す内容を整理できます。
先に答え:いつ相談すればいい?
ほかに気になる病歴や症状がない場合、米国生殖医学会(ASRM)は、妊娠を希望する女性が35歳未満なら12か月、35歳以上なら6か月妊娠しない時点で評価を始める目安を示しています。40歳を超える場合は、さらに早い評価が適切なことがあります。これらは、避妊せず妊娠を試みているカップルを評価する時期です。診察を受けるまで必ず待つべき期間ではありません。[1]
- パートナーが35歳未満12か月避妊せず妊娠を試みて、この期間を過ぎたら二人で相談
- パートナーが35歳以上6か月妊娠しなければ評価を始める目安
- 40歳を超える・気になる病歴がある早めに期間を待たず、相談時期を医療者と決める
ASRMの委員会見解に基づく目安。男性が35歳になると「6か月」に変わるという意味ではありません。症状や治療歴があれば年齢・期間に関係なく相談できます。
ここで混同しやすいのが「35歳」です。上の6か月という目安は妊娠する側の年齢に関する推奨であり、男性が35歳を迎えた瞬間に妊娠の可能性が急変するという意味ではありません。男性の年齢についての研究と限界は、35歳から父親を目指す記事で分けて説明しています。二人の希望する時期や健康状態も、相談の時期を考える材料です。
日本で受診する場合も、この表を予約の条件として機械的に当てはめる必要はありません。診療体制や個々の事情は異なります。「自分たちは今相談したほうがよいか」と医療機関に問い合わせること自体ができます。
1年や6か月を待たずに相談してよい場合
ASRMは、不妊に関係する可能性がある状態が分かっているとき、期間を待たずに評価を始めるよう勧めています。月経が不規則、子宮内膜症や卵管の病気が疑われる、性交に困難があるなどの事情が含まれます。男性側でも、精巣の病気や手術歴、精液検査の気になる結果、性機能・射精の悩みなどがあれば、早く相談する理由になります。妊活中の性欲・勃起・射精の相談も参考にしてください。[1][2]
抗がん剤や放射線など、妊娠に関わる可能性がある治療をこれから受ける人は、開始前に担当医へ将来の父親になる希望を伝えてください。薬を自分で止めたり治療を延期したりせず、必要な相談先を確認します。精巣の痛みやしこりなど、妊活とは別に診察が必要な症状も「1年待ってから」ではありません。
なぜ二人を同じ時期に調べるのか
妊娠まで時間がかかる理由は、男性側、女性側、双方に関係することがあり、一つに特定できないこともあります。AUA・ASRMの指針は、初期評価で男性と女性を並行して評価するよう勧めています。パートナーだけが何度も受診し、男性は最後まで待つという順番では、必要な情報がそろいにくくなります。[2]
並行して調べるのは、責任を半分ずつ割り振るためではありません。二人に必要な時間や検査を考え、遠回りを減らすためです。片方の結果が基準内でも、もう片方を調べなくてよいとは決まりません。男性の精液検査も、基準を上回れば必ず妊娠する、下回れば妊娠できない、という判定ではありません。精液検査の結果の読み方では、その理由と再検査の考え方を詳しく説明しています。[2]
一緒に同じ施設へ行く必要があるとは限りません。女性側が婦人科・生殖医療の外来、男性側が泌尿器科や男性不妊外来に相談する場合もあります。予約前に、その施設がどこまで対応し、必要ならどこへ紹介できるかを確認できます。
男性の初診では、何を聞かれる?
初診では、いきなり治療法が決まるわけではありません。男性側の基本は、妊娠・健康に関わる経過を聞き、必要な診察と精液検査を考えることです。AUA・ASRMは生殖に関する病歴と精液検査を初期評価に含め、結果や診察で必要な場合に追加の検査を選びます。日本産婦人科医会も問診、診察、検査を組み合わせて評価すると説明しています。[2][3]
聞かれやすい内容を、スマートフォンのメモに書いておくだけでも十分です。
- 妊娠を試みた期間。 避妊をやめた時期、これまでの妊娠や検査の経験。
- 体と治療の履歴。 精巣の病気、手術、発熱、抗がん剤・放射線治療、持病、現在の薬やサプリ。
- 性生活で困っていること。 勃起、射精、性交時の痛みなど。話しにくければ「詳しくは診察室で相談したい」と伝えて構いません。
- 二人の状況。 パートナーの年齢、月経や婦人科での相談状況、希望する時期。
テストステロン補充療法を受けている、または開始を勧められている場合は、妊娠を望むことを処方医にも伝えてください。補充療法と精子形成の関係、診察で聞くことを別の記事にまとめています。処方薬は自己判断で変えないでください。
診察や採血が必要かは、この内容と検査結果によります。全員が最初からホルモン・遺伝子・精子DNAの検査を受けるわけではありません。精液検査を受けるなら、採取方法、禁欲期間、提出時間は施設の指示を確認します。結果が気になっても、一回の数値だけで結論を出さず、再検査や専門医への紹介が必要か聞いてください。[2][3]
精液検査が恥ずかしい、と感じたら
採取場所、検査方法、結果が悪かったらどうしようという気持ち。どれが引っかかっているかを分けると、聞くことが見えてきます。日本の男性従業員を対象にした小規模な追跡調査では、職場の精液検査研究を知っていて参加しなかった34人のうち8人が「恥ずかしさ・ためらい」を理由に挙げました。別の質問に答えた83人中52人は、望ましくない結果への不安を報告しています。これは職場での研究参加者の回答であり、一般の男性や病院の受診者の割合ではありません。ただ、ためらいを感じる人がいることは、実際のデータにも表れています。[4]
予約前に、「自宅での採取は可能ですか」「院内採取なら部屋はどうなっていますか」「検体の持参方法と時間は」「結果は誰に、どのように伝わりますか」と尋ねられます。施設によって対応が違うため、先に確認して自分に合う方法を選んでください。採取が難しいときや、検査の日にうまくいかなかったときも、隠さず伝えれば次の方法を相談できます。
結果への不安は「もし悪かったら何をすればよいですか」と言葉にして構いません。精液所見は変動し、必要に応じて再検査します。低い値は、あなたの人間としての価値や、父親になれるかどうかの最終判定ではありません。日本産婦人科医会は、少なくとも2回の結果を確認することと、基準値だけで妊娠のしやすさを断定しないことを説明しています。[3]
受診を「次の一歩」に変える質問
初診で全てを理解しなくても大丈夫です。帰る前に、次の四つを確認できれば、次の行動が具体的になります。
- いま分かっていることは何か。 検査の前でも、医師が気にしている病歴や症状を聞く。
- 次に何を、いつ調べるか。 精液検査や再検査が必要か、採取の条件は何か。
- パートナー側の評価とどう合わせるか。 同時に相談したほうがよいことは何か。
- 結果が出た後の相談先はどこか。 同じ施設で説明を受けるか、専門外来へ紹介されるか。
原因が見つかる場合も、すぐには分からない場合もあります。それでも、相談すると「次に調べることがあるのか」「様子を見るならどのくらいか」が見えます。AUA・ASRMの指針は、男性の評価を、治療可能な状態や健康上の問題を見つけ、必要な治療や選択肢につなげる過程と位置づけています。受診で妊娠を約束することはできませんが、分からないまま一人で抱える必要もありません。[2]
よくある質問
男性が35歳なら、6か月で受診すべきですか?
「35歳以上なら6か月」は、ASRMが示す妊娠する側の年齢を含むカップルの評価目安です。男性の35歳を境に受診期限が変わるという推奨ではありません。ただし男性側に症状や治療歴がある、二人の希望する時期が迫っているなどの事情があれば、早めに相談できます。[1]
精液検査をまだ受けていなくても相談できますか?
できます。病歴や、妊娠を試みた期間を伝えるところから始められます。必要な検査と採取方法は医療機関で確認してください。検査結果を持っていれば、採取日や条件も一緒に伝えると役立ちます。[2]
パートナーに異常が見つかったら、男性は検査しなくていいですか?
そうとは限りません。妊娠まで時間がかかる理由は複数重なることがあります。AUA・ASRMは男性と女性を並行して評価することを勧めています。二人の検査をどう進めるか、担当医と相談してください。[2]
まとめ:不安なままでも、相談していい
受診の目安は、二人の年齢、妊娠を試みた期間、症状や治療歴から考えます。男性が35歳になっただけで急ぐ必要が生じるわけではなく、逆に症状があるなら1年を待つ必要もありません。初診では、知っていることだけを伝え、分からないことを質問して構いません。恥ずかしさがあっても、予約前に採取方法やプライバシーを確認できます。相談は希望を失う行動ではなく、希望のために情報を増やす行動です。
出典参考資料・文献
本文で参照した資料です。リンクは新しいタブで開きます。